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太陽光のスペクトル分解

最終更新日
2004年7月31日

 太陽が放射している電磁波のうち、人の目に見える光の領域を可視光線といいます。私たちが目にする事が出来る「色」とは、この可視光線が認識されたものです。「可視光線」の波長は、380〜780nm(ナノメートル)の範囲です。太陽の光は白色ですが、実際にはさまざまな色を含んでいます。アイザック・ニュートンはプリズムの屈折を通して、太陽の光を赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色の虹の色に分解してみせました。この波長の異なる、七色のスペクトルが集合したものが太陽の白色光の正体です。私たちが空に見る虹は、プリズムの役目を果たす大気中の雨粒によって、屈折・反射されて現れている、太陽光のスペクトルです。

 

 

 

 

光の反射で色が見える!

 


 ここに真っ赤なリンゴがあります。さて、太陽光に照らしだされたこのリンゴが赤いのはリンゴ自身が“赤い”から赤く見えると信じていませんか?ところが、そうではないのです!まず、色が見えているということは、太陽から来る可視光線がリンゴに反射し、その光が目に入り、脳で認識されているわけです。実際にこのリンゴは、太陽からの可視光線の内、赤い波長の光を反射し、それ以外の光を吸収しています。その反射された「赤い波長の光」が眼の細胞を刺激し、脳に伝わることによって、りんごは赤く見えています。つまり、リンゴはモ赤いモのではなく、私たちには赤い色として認識される物体だという事です。私たちが色を認識する仕組みは、少々複雑なのです。

 

 

空は何故青い?

 


太陽光は地球の大気中に入ると、空気の分子や、塵、水蒸気などにぶつかり散乱します。その時最も散乱するのが、波長の短い「青い光」です。「青い光」は空高く、あちらこちらに拡散されているので、空は青く見えるのです。台風が通り過ぎた跡のカラッとした青空が美しいのは、空に水蒸気や、塵などの分子が少ないからです。それでは、朝焼けや夕焼けの空は何故赤いのでしょうか?朝と夕方の時間は太陽高度が低く、太陽は地平線近くにあります。したがって、日中に比べて、太陽との距離が離れています。空で散乱している「青い光」は距離の長い分、たくさんの埃や水蒸気の分子の中を旅します。その結果、「青い光」は散乱しきってしまって私たちに届かなくなります。代わりに、大気の散乱を受けにくい「赤い光やオレンジの光」が私たちに届くことになるのです。

 

 

 

 

   

“コーン”と“ロッド”

   


私たちの目の中には2種類の視細胞があります。その形から「錐(すい)状体(コーン)」と「杆(かん)状体(ロッド)」と呼ばれています。“コーン”は主に「光の周波数・色」を、“ロッド”は主に「光の強さ・明暗」の知覚にそれぞれ対応しています。“コーン”と“ロッド”には、光を受け取るアンテナの役割をしている、光受容体タンパク質がぎっしりと埋め込まれています。

 “コーン”の光受容体タンパク質には3種類あり、それぞれ、赤色・青色・緑色の可視光線を吸収します。人の「光の三原色」が赤色・青色・緑色である理由はここから来ています。例えば鳥類では色を認知する光受容体が4種類あり、「光の四原色」に成ります。人はこの赤色・青色・緑色の光受容体を組み合わせて認識する事で、実に1000万の色を分別出来ると言われています。

 “ロッド”の光受容体タンパク質は「ロドプシン」と呼ばれています。ロドプシンは光を検出する性能がとても高く、私たちの目は一粒の光子をあてるだけで、光を感知出来ると言われています。光を吸収したロドプシンが、シグナルを神経に伝えるための、最初の反応までに要する時間は約300フェムト秒と言われています。これがどれだけ短い時間かというと、光は1秒間に3億メートル進みますが、300フェムト秒ではわずか、0.09ミリしか進む事ができないほどです。

   

 

   
 光受容体タンパク質によって吸収された可視光線は、電気的な情報へと変換され、脳で処理された結果、視覚として私たちに認識されます。私たちの認識は驚くべき生体の精巧な仕組みによって成り立っている事が、科学の進歩によって明らかになりつつあります。しかし、私たちが体験している世界のリアルさ、例えば、赤いリンゴのリアルな質感、この様な「クオリア」がいかなる仕組みから生じるのか?その全体像は未だ深い謎に包まれています。案外とヒントは太陽の光のなかにあるのかもしれません。私たちは長い進化の過程を経て現在の視覚を獲得しました。地上に到達する電磁波のうち最も量の多い周波数帯は可視光線ですが、もし、太陽から届く光の内容が異なっていたら、私たちの視覚も別の設定になっていたかもしれません。私たちの認識という設定は、太陽の放射エネルギーに条件付けられてきたのです。すなわち、私たちが太陽のことを理解することは、私たち自身を理解することでもあるのです。    
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